2011年10月 行政視察報告「大都市行財政制度調査特別委員会行政視察」(大阪市)

平成23年10月31日~11月1日にかけて大都市行財政制度調査特別委員会で名古屋市並びに大阪市に行政視察に行って参りました。
今回は、その視察内容についていくつかご報告いたします。

新たな大都市制度の構築について
(1) 大都市制度研究会報告集

大都市が設置する公立大学である3市立大学(横浜・名古屋・大阪市)は、より活発な相互交流を推進するため、平成21年3月に連携協定を締結し、その連携事業の一環として、大都市制度研究会を発足した。

現在、国において検討が進められている地方分権改革については、人口減少・少子高齢化社会の到来や家族、コミュニティ機能の変容など、我が国の諸問題への対応として注目されるものである。特に、人口、経済などが集中し、高次な都市機能を有する大都市のあるべき姿を追求することは、3大都市により設置された3市立大学の重要な役割の一つと考えられ、各大学の研究者がその専門的な見地から、国などにおけるこれまでの検討内容や今後の方向性などを検証し、より良い大都市制度創設に向けた議論を促進させるため、平成22年11月に本報告集を取りまとめた。

大阪市ホームページ
「地域主権確立に向けて」平松邦夫

【報告集の各テーマ】

  1. 「基礎自治体重視の地域主権改革と大都市制度」 
    -廣田全男(横浜市立大学教授)
  2. 「地域間財政調整制度改革と3大都市の役割」 
    -森徹(名古屋市立大学教授)
  3. 「新たな大都市制度の構築に向けて」 
    -阿部昌樹(大阪市立大学教授)
(2) 新たな大都市制度の構築に向けて

上記(1)の報告集の各テーマのうち、阿部大阪市立大学教授が作成した、3.「新たな大都市制度の構築に向けて」の内容は次のとおりである。

報告書の概要

横浜市、大阪市および名古屋市の3市によって組織された大都市制度構想研究会による「都市州」の提案は、近時における道州制議論の盛り上がりを踏まえて、かつて法制化されはしたものの、実施されることなく終わった「特別市」の制度を、道州制の導入とともに、道州制に適合的なかたちで復活させることを意図したものであった。

しかしながら、政権交代とともに、道州制の導入可能性は遠のいた。このことはまた、道州制の導入とともに都市州を制度化し、横浜市、大阪市、および名古屋市の3市に適用する可能性も遠のいたことを意味する。その一方で、大都市制度構想研究会が、道州制の実現すべきものとして提言していた「新・特別市」と類似の構想が、指定都市市長会によって「特別自治市」という名称で提案されている。

これらのことを踏まえるならば、現時点において横浜市、大阪市、および名古屋市の3市が目指すべきは、特別自治市の実現を目指して、他の政令指定都市と共同で国政に働きかけていくとともに、特別自治市が実現されるまでの過渡的な措置として、基礎自治体優先の原則の徹底、法令による義務付け・枠付けの見直し、大都市税制の整備等を、同じく他の政令指定都市と共同で国に対して要請していくこと、そして、それとあわせて、それぞれの市の実状にあわせたかたちで、住民自治の充実を図っていくことであろう。

地域主権確立宣言について

大阪市の平松邦夫市長は平成22年7月15日、市の目指す自治体のあり方をまとめた「地域主権確立宣言」を公表した。住民に最も近い基礎自治体としての大阪市の権限や財源を強化する一方、大阪府を含む広域自治体の役割を、物流・情報ネットワーク分野などの「調整機能」に限定。大阪府の橋下徹知事が掲げる「大阪都構想」に対抗する狙いがある。

宣言では、今後の自治体のあり方として、現在の国と都道府県、市町村という上下関係を、対等の関係に組み替えるべきだと主張。権限を強化した基礎自治体同士の水平連携を重視し、「関西州」を目指すとしている。